
#76 一刀両断侍
去年のとある飲み会の帰り道だった。
厳密に言えばさっきまでいた飲み会の帰りだ。なんだか居心地が悪くなってしまい、次の予定があると嘘をついて出てきてしまった。開始から一時間もたってない頃だ。我ながら情けない。
たまたま同じタイミングで退席する知人と駅まで歩いた。秋の気配がする、軽やかに涼しい日だった。
「仄雲さんって大人数の飲み会になるとすぐに帰りますよね」
突然ズバッと言われた。彼女とは別の仕事でも一緒になることが多いとある記者の方だった。探り探りの間柄と思っていたので、鋭利な言葉が飛んできて狼狽してしまった。
「そ、そんなことないです。どちらかといえばお酒が入れば長いほうです。」
その日は20名ほどのかなり大きめな飲み会だった。とある雑誌の決起会だ。
こういう大きな飲み会になると、20、30分もすれば4〜5人の小さなグループになって会話が始まっていく。僕の悪い癖なのだが、あまり自分が知らない話、どうしても興味の湧かない話になると、無意識で別のグループの話を聞いてしまう。そして気が付けばどこのグループにも居場所はなくなり、やたらトイレに避難する情けない人になる。今日もこれだった。
「お酒、一生懸命飲んでましたね。」
僕が酔っ払わないと初めましての飲み会であまり話せないことも見透かしたようにクスクスと笑う彼女。斜め前に座っていたらしく(気づかなかった)その様子は分かりやすかったと言われた。そういうの本当に恥ずかしい。
でも、気持ち分かりますという話でしばらく盛り上がった。
10分くらい話したところで、楽しいし、来月の仕事の話もあるので他意なく「この後飲みませんか?」と誘ってみると「いえ、次があるので」とズバッと断られた。さっきまで楽しく話していたことは嘘だったかのように顔もスンッとして感情は限りなくゼロだった。彼女は腕時計を確認し「では」と言い残し颯爽と去っていった。